69.アーティチョークを探した

電子書籍を書いています、楠田文人です。
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高校の時、友人が伊丹十三に ハマってまして、追っかけじゃなくて「女たちよ」と言うエッセイのファンで、「おもしろいから読んでみな」と貸されました。確かにおもしろい。○○の話とか、△△の話とか、□□の話とか(※ネタバレになるので書けません)、今読むと高校生向きの本ではなかったと思う。
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エッセイで色々な話が登場します。食べる話に登場する「アーティチョーク」がおいしそうで食べてみたかった。
当時、レストランで初めてカニクリームコロッケ」「ライスグラタン」とかを食べた時は、その味に驚いた記憶があります。ハンバーガー、フライドポテト、フライドチキンも次第に日常的な食べ物になりましたけど、初めて食べるとそれまでの食生活では出会わない味なので結構びっくりする。

アーティチョーク」は大きな松ぼっくりみたいな形をしていて、隙間に入ってる実だか種だかを食べるらしい(今となっては記憶が定かではない)。どう考えても八百屋で売ってる気がしない。友人は近所の八百屋に行ったけど見付からなかったようです。

「済みません」
「あいよ! 何を差し上げましょう」
アーティチョーク、ってありますか?」
「あーてぃ!? 何だいそりゃ?」
アーティチョークって言うらしいんだけど」
「チョークって、白墨を食べるのかい?」
※ 黒板に板書するチョークは白墨とも言いましたよね

アーティチョーク」は「西洋アザミ」と言うそうな。これまた植物の知識がないので見当も付きませんが見付からないので諦めて以来、未だに食べていない。
伊丹十三は、ブラザース・フォアのベストアルバムの中に収められていた「北京の 55 日」と言う曲のライナー・ノーツで知っていました。同じ題名の映画の主題歌で、映画に伊丹十三が出演していたらしい。見てないけど。
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昔の洋食で思い出すのは、スパゲティはナポリタンが普通で、って言うかそれしかない時に初めて食べたミートソースです。今は無き渋谷駅玉電ホームにあったコーヒースタンドのミートソースはソーセージが入ってた。こちらも驚きの味でした。
それから、田園調布と自由が丘の中間あたり、環八から少し入ったところにあったドライブイン「ヴァンファン」のドライカレーは、カレーピラフではなくてご飯の上にキーマカレーを乗せて、その上にポーチドエッグを乗せたものでした。懐かしい。

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「ただいま」
「お帰り」
「おう、花子」
「何だい、父ちゃん?」
「今日、学生さんが白墨買いに来たけどよ」
「白墨!?」
「そうだよ」
「八百屋で売ってる訳ないじゃん!」
「俺もそう言ったんだけどよ」
「売り始めたのかなぁ」
花子の言葉に『白墨、売り切れました』の札を下げることにした。話は後で考えりゃいい。
翌日のことだ。
「いらっしゃい!」
作業着を着た老人が札を見詰めている。主人は老人に声を掛けた。
「白墨ですか?」
「ええ。売り切れって、いつ入って来るんですか?」
注文だ!
「お取り寄せになります」
「それじゃ、白を 1 カン頼む」
そう言うと老人は行ってしまった。翌日から主人は白墨問屋探しが始まったのである。