77.日本的な言い回しを考える

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インターネットで一時、話題になった、英語など他の外国語にない日本語の表現、「口寂しい」。何か食べたいんだけどまともに食事するんじゃなくて、ちょっと口に入れたい。何となく足りなくて口が寂しい思いをしている。間食のいい理由になります。他の外国語の表現にはないみたいで、隙間を埋める表現を持つ日本語みたいな話になっていました。そんな表現を探してみました。

口直し
食べたものが合わなくて味が残ってる。いつもの、おいしいもので口を静めたい。
「さあさあ、お口直しに、ひとついかが?」
「おっ、これは済まんな」
「有り難い」
しかしだ。何故、口直しをしなければならなくなったのだろうか。
思惑とは違うものを食べなければならなくなったから口直しが必要になる、と言うことは、口直しをする原因となった「口荒らぶる」こと、とでも言うべきことがありそうです。何だろう。会食に『煮干し入り、いちご大福カレー』でも出たのだろうか。
また、口直しが提供されるためには、口直しを用意出来る環境がなければならない。口に合わない食べ物を食べさせられることになり、口内がいつもの味でないもので充たされることが予想出来たので、それを復旧出来る環境を提供しておいた。結構面倒な展開だなぁ。口直しを提供する女将さんは、割烹着を着て頭に白い手拭いを巻いて、ゆるキャラコンテストの、ゴワさんを思い出します。
 ゴワさんの登場する「用水路のナンタス」は「電柱人」の中の作品 こちらへ >>

口移し
寝たきりで動けない人に薬を飲ませたり、奥義を口で伝えることを言うんですよね。なんだかキスの延長に思ってる人が多いみたいでした。 それなら、違うパターンで「焼き鳥の口移し大会」とか「讃岐うどん早喰い口移し大会(カレーうどんあり)」なんてどうだろう。「タバスコの口移し」や「ハバネロの口移し」は多くの犠牲が出そうだし、「チューブニンニクの口移し」は拷問だろうなぁ。「荒挽きブラック・ぺッパーの口移し」でくしゃみをすると、作業が中断します。「ホワイト・ペッパーの口移し」でも同じか。

口封じ
喋られると困るので喋りそうな人を止める。ミステリで殺人の理由によく使われます。
大人になれば一つや二つ喋られては困ることがあるのですが、端から見ると大したことではなかったりする。寝冷えし易いから、大きくなってもお腹にタオルを撒いて寝るところを合宿で見られて困り、口封じが必要になったケースが考えられます。口を塞ぐだけなら、昼ご飯の残りのお握りや、合宿地で買った温泉饅頭を押し込んでやれば喋れなくなる。口封じの代わりにご馳走するとお代わりをねだられます。口止めってのも同じ意味だな。

口は災いの元
どうも口は悪者の代表になっているようで、「口火を切る」って言い方などもそうだけど、鉄砲みたいなところもある。切った口火は燃え盛り、次の材料に燃え移り天を焦がす程の炎が上がって、大江戸は火の海になってしまった。

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ここからは存在しない表現。

口賑やか(くちにぎやか)
ありそうな言い回し、口賑やか。ミックスピザと、一緒に大王イカのパエリヤと、センザンコウのアイスクリームを食べるとか、普段は食べないような和食ではない感じの物をたくさん食べること。テーブルに並べるのではなく、口の中に詰め込んで食べる必要がある。口直しでこれをやると食べ過ぎてお腹を壊すでしょう。

口守り(くち・まもり)
余計なことを喋らせないよう、口が災いの元とならぬよう、守衛さんの役割をしてくれる小さい門番。口の周りを守ってくれる一寸法師みたなやつと思えばいい。
お酒を一合も呑むと、酔っ払って口が回らなくなり、門番の役目を果たさなくなります。
「おい。くちまもり」
「あたしは、くちもまりじゃない! うーい、ひっく」
「そんなこと、言ってないだろ。くちまもり」
「くまちもり、でも、くもちまり、でも、なぁい! 文句あるか!」
「くまもちり、が抜けてる」
「あーははは。そうかい、忘れたかや?」
「口守(こうしゅ)じゃだめか?」
「『災い避けのコーシュ』って、ロシアのお話に出てくるのみたいだね」