49.鼻先案内犬さんの適応レベル

電子書籍を書いています。楠田文人です。
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前に「鼻先案内犬シリーズ」を書きました。
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このブログでも主人公犬の三月堂さんにインタビューしたので、ご存じの方もいらっしゃるでしょう。
この名前はもちろん「水先案内人」から頂いたもので、水先案内人が流れを読んで舟を進めるのに対し、残された物に付いた匂いを追って、無くした物を探してくれる犬が主人公です。設定では警察犬より嗅覚が鋭いことになっています。我々は犬ではないので同じことは出来ませんが、色々な匂いの中から目的の匂いを探すことは可能でしょう。
同じように、言葉の中から知っている声や、言葉のイントネーションを聞き分けることが出来ます。

 ふるさとの 訛り懐かし 停車場の ひとごみの中に そを聞きに行く

上野駅は色々な地方から来た人が集まるので、ふるさとの方言を聞きに行く、って石川啄木の俳句ですね。色々な方言が飛び交っていても、自分のふるさとの方言だけその中から聞き取れて、同じ様に大勢の中から知っている声を聞き分けられたり顔を見付けられる。心理学で「適応レベル」と言ったかな。五感にはそう言う特徴があります。
普段は標準語を喋ってる田舎の人が、実家に電話すると突然方言に戻るってのも、頭のスイッチが田舎にいる状態になってしまうからでしょう。

 へへっ、匂いを探すなら、嗅覚さんに頼めば簡単だよ

「お、三月堂さんじゃん。いつの間に?」

 ごみの振りをして、人ごみの中に隠れていたんだ

「視覚さんをごまかそうと思ったのか?」

 大勢の中から、知っている顔を探そうとして頑張っている視覚さんには難しいかもね

「そりゃ、人ごみと思って探してて、犬ごみが混じってたら見逃すよ。ごみ犬だったっけ?」

 視覚さんがだめなら、嗅覚さんに助けてもらえば?

「僕の嗅覚さんは宛にならない」

 まー人間だもんね。聴覚さんはどう?

「だって、三月堂さん、音を立てないように固まってたでしょ?」

 てへへへ

「あ、寝てるとも言う」

 こらこら

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鼻先案内犬シリーズ5「ドッグスクール編」では、聴覚に優れたミナちゃんが登場します。
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クレバリードッグトレーニングセンターでは、鼻先案内犬になるために訓練を行う「匂いの部屋」「大きな音の部屋」があります。「大きな音の部屋」は、最新のお化け屋敷の音響システムを利用していて、歩くたびに色々な声、映画のような様々な爆発音や追突音、雷など自然現象の音が鳴ります。三月堂さんが恐がったこの部屋も、ミナちゃんは聞こえる音をコントロール出来るので、なんなく通り抜けました。ミナちゃんを主人公にした話も考えているんですけどね。