38.読みたくない話、書きたくない物語

電子書籍を書いています。楠田文人です。
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書くつもりがないのはホラー系。それと、残酷系も書くつもりはありません。許せるのはテレビの時代劇で侍に斬られるシーンくらいかな。それらのジャンルは書きたい人が書いて、読みたい人が読めばよろしい。
宗教的色の強い話や特定の主義主張に則った話も、お話に見せかけて人を勧誘したり納得させようとする魂胆が見え透いて嫌いです。
例えば、最初に堂々と「このお話は『神はおわしまする教』の勧誘のために作られました」とか、「このお話を読んだ方は、『神はおわしまする教』に入信されたと認定します」とか、書いてあればまだいいと思う。読まないけど。

「何故、我が『神はおわしまする教』の信者は増えないのだ?」
「住宅街を一軒ずつ個別訪問をして勧誘しているのですが、どのお宅も『神はおわしまする教ですが』と言った途端に締め出されます」
「そんなに嫌われているのか?」
「嫌われています。また、嫌われていることに伝導師達が気付かないのも問題ですが…」
「お前達は嫌われている、と教える訳にもいかんしなぁ」
「いい考えがあります!」
「何だ?」
「マンガを使ったらどうでしょう? 『神はおわしまする教』の素晴らしさをマンガで説明するのです」

とまあ、こんな具合に制作が決まりますが、ストーリーの面白さがメインではないので押して知るべし、って気がします。どうせ説教をそのままマンガにしてるに違いない。

「どうだ。『輝ける、神はおわしまする教』の感触は?」
「だめですね。ポストからはみ出したまま、見ていない家はないくらい、『神はおわしまする教』と聞いただけで嫌われてます」
「紙ゴミにたくさん挟まってます」
「そうか…」
「司祭! 『神はおわしまする教』の信者にならないと地獄に落ちて大変、ってマンガにしたらどうでしょう?」
「脅かす訳か」
「ちょっと捻って、地獄に落ちた少女をスーパー神はおわしまするマンが救い出す、って筋書きにしたらどうでしょう?」
「おお! それは面白い」
「少女が道を歩いていると、きらきら光るブローチが落ちていた。拾おうとすると、それは悪魔の悪企みだった」
「ふんふん、それで?」
「ブローチから悪魔が現れて、少女を地獄にさらって行った」

「うーん」
気を失っていた少女は起き上がると、辺りを見回した。
「ここはどこ?」
「くわっはっはっは。地獄へようこそ」
「きゃー! 誰なの?」
「俺様は悪魔だ。お前は地上で善い子として知られている。だがな、地獄に取っては極悪人に等しいのじゃ。善い子の罪で、ずーたずーたに引き裂いて、千年間苦しみを味あわせてやるから覚悟しろい!」
悪魔の鋭い爪のある手が伸びて来る。
「きゃー! 助けて」
「待て!」
「誰だお前は?」
「地獄の苦しみから人々を救い出す、スーパー神はおわしまするマンだ。早くあなたは逃げなさい」
「ありがとう」
少女は振り返りもせずに走って行った。
「さあ悪魔。今度はこの私が相手だ!」
「くぉーっほっほほ。善い子が逃げた先を知っているか? この先にはデズデモの森が広がっているのだ! くわっはっはは」
「何っ!?」
スーパー神はおわしまするマンの顔から血の気が引いた。

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「どうだ。『スーパー神はおわしまするマン』の感触は?」
「大好評です! やたら受けて全て捌けてしまい、続編を早く寄越せと言われています」
「そうか! 急いで作れ。それから続編は日曜日に礼拝で配ると伝えろ!」
ほどなくして、宗教法人『神はおわしまする教』に、有限会社『スーパー神はおわしますだ』が併設された。