17.注意一秒、ケガ一生

よく知られた交通標語ですね。他にも「ちょっと待て、車は急に止まれない」「狭い日本、そんなに急いでどこへ行く」などがあります。警察署単位、自治体単位で結構募集されてるようです。探してみました。

あせりは禁物 あさりは海産物
審査員達に受けたのは想像付きますが、交通標語から外れてるんじゃないかと心配になります。あさりの取れない地域では思い付かない標語です。こんなのはどうだろう。
「急ぎは禁物、イソギンチャクは禁漁」

スピード違反罰金10万円 ポーク卵定食650円
似たような金額比較のパターンが他にもありました。この看板の先に洋食レストランがあって道路脇に「ポーク卵定食650円」の看板があったら、標語で宣伝してるみたいに見えるので、向かいの「スパゲティ専門店ミラノ」から文句が入りそうです。しばらくして向かいの道路に「スピード違反罰金10万円 日替わりスパゲッティ600円」の看板が立つ可能性は否定できません。
人気のない山中にポツンとこの標語の看板が立っていたらちょっとシュールかも。

美人多し、わき見注意
余計危ない、って。

今日も無事故でご苦労様です
確かにご苦労様なんだけど、漠然とし過ぎてる。交通標語に限らなくても成り立つから、建築現場に立っていても不自然じゃないし、高速道路の出口に立っていてもいいけど、病院の手術室の横にあったらちょと危ない。

けんかするな、負けたら病院、勝っても監獄
交通標語じゃないけれど、旧正月に暴力事件が多いことから海南省白沙リー族自治県の警察署が出した横断幕だそうです。中国らしい損得勘定の入った標語で、かなり効果があったとか。

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標語の多くは五七調で、おそらく和歌の流れを汲んでいます。和歌と言えば短歌を思い浮かべますが、和歌には短歌以外に長歌反歌があります。長歌は五七五七五七と続き、最後が七七で終わるもので、長歌の最後に長歌の要約だったり追加する歌を反歌といい、短歌と同じ五七五七七の三十一文字で構成されます。反歌は一首でなく数首で構成されることもあります。
五七五はリズムがよく、読む時は「12、34、5、(ウン) 12、34、56、7 12、34、5、(ウン)」みたいな感じで 4 拍子で読みます。百人一首の読み上げもテンポは違うものの似ています。
長歌のように五七五七で構成される脅迫状が登場するのが「鼻先案内犬番外編 祈祷師高山宜定 恨みの手紙」です。
 鼻先案内犬番外編 祈祷師高山宜定 恨みの手紙はこちら >>

セリフが全て五七調のお話はかなりうっとうしいのでそれは止めといて、五七調で喋る登場人物を一人くらい登場させるはありかもと思ったりします。

16.脱力感の残るお話を書く

お話には色々な種類があります。自分で書くお話は「あー、面白かった」と言えるお話をメインにしています。その中でも「すっきりする話」「ほっこりする話」「くすっとする話」などを書くようにしていますが、時々「脱力感の残る話」を書きたくなることがあります。
「あぁあ・・・」って感じ。
 脱力感をイメージした「長靴を嗅いだ猫」はこちら >>
「鼻先案内犬番外編 ハルさんの話」も、脱力感を意識しています。ハルさんは、鼻先案内犬の三月堂さんの母犬で、若干の天然ボケのある犬さんです。
 鼻先案内犬番外編 ハルさんの話はこちらと >> もう一つこちら >>
脱力感の残るお話は結構難しくて、面白くて脱力感の残る読後感のお話となると中々うまく書けません。そんなもん書くなって? いやー、書きたいことがあるんですよ。

「待ちかねたぞ、武蔵」
「いやー済まん、済まん。実はさ、出がけに洗濯物を干して出ようと思って、物干竿を拭いてたら、何かあっちの空が凄い曇ってんじゃん。仕合いが済んで戻って洗濯物が雨で濡れてたら嫌だと思ってさ、どうしようか考えて部屋の中に干すことにして、部屋の中に物干竿を掛けるとこ探してたら、天井に蜘蛛の巣を見付けてさ」
「それでどうした?」
「丁度いいと思ってさ、物干竿で蜘蛛の巣を取ろうとしたら、反対側で障子にぶすっと穴を開けちゃってさ、慌てて振り向いたら今度は蜘蛛の巣に向けた側が襖にぶつかってさ、ちょっと穴が開いちまってさ、で、あっと思ってまた振り向いたら、障子にもう一つ穴を開けちまったんだよ」
「それは難儀であった。いざ、仕合おうぞ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。まだ続きがあるんだ。全部話さないと気が済まん」
「仕方ない奴。話せ」
 武蔵は近くにあった岩に腰掛けた。
「小次郎、おぬしも立ってないで座れ」
 小次郎も渋々近くの岩に腰掛ける。
「それでな、障子と襖の穴をどうしようかと思ってさ。こんくらいの穴が開いたんだよな」
 武蔵は指を丸くして穴の大きさを再現した。
「貼り直してたら遅れちゃうし、とりあえず物干竿を畳に置いて穴を見てたんだ。そしたら、押し入れの中でがさごそ音がするんだよ!」
「それで?」
 小次郎はじれったそうに聞く。
「そーっと襖を開けたら、ぱっと飛び出して来たのは一匹の白猫と二匹のネズミだったんだ」
「飼ってるのか?」
「飼ってない。よそから入って来たらしい。そんで、猫がネズミを追ってるとばっか思ってたら、猫がネズミに追われてたんだな。壁の前で猫が両側からネズミに挟まれてさ、動けなくなったんだ」
「ニ対一か」
 武蔵は構わずに続けた。
「猫が前に動こうとするとネズミが飛び掛かる振りをするんだ。猫も痛い目を見るのは嫌だからすっと元の位置に戻る。そんで、後に動こうとするともう一匹のネズミが飛び掛かる振りをするんで、猫はまた元の位置に戻る」
「それで?」
「どうなったと思う?」
「どうなったのだ?」
「庭からにゃぁ、と声がしたと思ったらもう一匹、今度は黒猫が現れてネズミ達に向かって行った」
「ニ対ニになったのか」
「そうだ。ネズミ達もこれには慌てて猫とネズミは並んで向かい合う形になった」
「ふむ。それで猫がネズミを仕留めてお終い、って訳だな。それでは仕合おうぞ」
「いや、まだ続きがあるんだ」
「まだあるのか!?」
「まだある。全て話さんと死んでも死に切れん」
「仕方ない奴だな。話せ」
 小次郎はそばに刀を置き柔軟体操をしながら聞いた。
「今度は廊下からネズミが一匹、現れた」
「ネズミが?」
「そうだ。ニ対三になったんだ」
「また猫が不利になったのか」
「そう思うだろ? 儂もそう思った。ところが・・・」
「ところが? どうした。早く話せ」
 プーン。蚊が一匹、武蔵と小次郎の間を飛び抜けて行き、二人は暫し羽音を追った。

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「それで?」
 小次郎が急かせる。
「猫が庭に逃げてネズミが追って行った」
「戦ったのか? どちらが勝った?」
「いや、三毛猫が一匹現れた」
「三対三になったのか!?」
「そうだ。猫とネズミが庭で睨み合っていると、横の茂みから猫達が、物置小屋からネズミ達がわらわら現れた」
「この話はいつまで続くのだ?」
「まだ終わらない」
「仕合う気がなくなった」
 小次郎は疲れた顔を見せた。
「五十匹を越えた時のことだ」
「五十匹だと!? 数えたのか」
 小次郎は目を丸くして聞いた。
「大勢の敵に襲われた時のことを考えて、素早く相手の人数を勘定する訓練をしているからな」
「何が起きた? 犬でも現れたのか」
「空が暗くなり、突然雨が降り出したのだ」
「曇ってたと言っておったな」
「雨に濡れながらも睨み合っていた猫とネズミが、諦めたように茂みの方と物置小屋の方に分かれて戻って行った」
「合戦はお流れか」
「ところがその時、大変なことになった」
 小次郎は空を見上げて言った。
「今日の仕合いは止めよう。仕切り直しだ」
「話はまだ続くんだ」
「…」

中々脱力感は出ないですね。

15.So What(ソー・ホワット)

マイルス・ディビスの「Kind Of Blue」に収められた有名な曲です。このアルバムが有名なのは緊張感漂う演奏もさることながら、モードジャズの始まりを告げる(定着した?)アルバムだからです。同じようなモードジャズとして「Milestones」もよく知られてますよね。ジャズが発展する中で、コードを複雑にして演奏の幅を広げたビバップが行き詰まって、モードジャズが始まったらしい。
 So What はこちら >>
 Milestones はこちら >>
モードジャズについては色々なサイトで取り上げられているので、そちらを参考にして頂くといいのですが、モードとは旋法(教会旋法)のことで、「ドレミファソラシド(イオニアモード)」以外に「レミファソラシドレ(ドリアモード)」「ミファソラシドレミ(フリギアモード)」「ラシドレミファソラ(エオリアモード)」など、色々なモードがあります。
「グリーンスリーブス」やサイモン&ガーファンクルの「スカボローフェア」もドリアモードだそうですね。
 グリーンスリーブスはこちら >>
 スカボローフェアはこちら >>
民謡らしい感じのする曲で、三拍子が余計古さを感じさせるのかもしれません。思わず冷凍のドリアをチンして食べました。
モードジャズでも穏やかな感じの曲もあります。ハービー・ハンコックのアルバム「処女航海」の代表曲と「Dolphin Dance」です。
 Maiden Voyage はこちら >>
 Dolphin Dance はこちら >>
モードの曲は、聴く分には特にどうってことはなく、普通のコード進行を使った曲とは雰囲気が違うくらいですが、演奏するアマチュアベーシストとしては結構悩みます。テーマの部分はなるべく同じラインを弾くようにして、ピアノやサックスなど他の楽器がソロに入ったら即興で弾くので毎回違うベースライン(ベースのメロディ)になります。
ベースラインの取り方は、大まかに「ブルース(ブルース系ロックを含む)」「その他(普通のコード進行の曲)」の二種類に分けられます。ブルースは昔からずっと親しんでいるので、特に気にすることなく、外れることもなく、ブルーノートスケールとメジャースケールを混ぜて弾きます。その他の曲はコードから外れないように、曲のキーを意識してベースラインを作ります。コードごとのスケールを組み合わせるのは、曲の調性が崩れる感じがするので余り好きではありません。
モードはどちらとも違う。モードの場合はコードがなくても、So What は「Gm7」と「G#m7」の 2 コードの曲と考えて弾けばいいんだけど、どれも同じになっちゃうんだよね。スケールを意識し過ぎだろうか。今まで演奏したことがあるのは「So What」と「Dolphin Dance」ですが、簡単に思えて弾くと同じようなラインを弾いてたりする。奥が深いけど入りたくないなぁ。

深大寺線物語」はジャズが登場するお話です。他の作品と違って不思議なものは出て来ません。
 深大寺線物語はこちら >>
京王線調布駅深大寺を結ぶ架空の路線「深大寺線」を舞台にしたミステリで、調布駅前に置かれた深大寺線の廃車両を再利用したカフェ「深窓館」での会話が中心です。主人公は深窓館常連の医師、小石弥平。ホットドッグがおいしいと評判の深窓館のママ、佐伯彩は小石の高校の同級生の妹です。小石と彩の兄達はジャズバンドを作ろうと計画していて、結局ピアノが見付からずに断念していますが、学生時代からののジャズ好きで、小石は店に来るたびにレコードを持って来て店内の電蓄で掛けてもらいます。時代は 1950 年辺りで、ビバップ全盛、クールジャズ、モダンジャズが登場し始め、モードジャズはまだまだです。在日米軍基地が近かったので新しい音楽情報も割とよく手に入っていたようです。
 

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「Kind Of Blue」が登場しても全てのミュージシャンがモードジャズに走った訳ではなく、同じ年にトランペットのブルー・ミッチェルが「I'll Close My Eyes」のアルバムをリリースしており、こちらはそれまでのジャズを踏襲したスタイルで、身構えることなく安心して聴けます。