73.巴旦杏と葛根湯

電子書籍を書いています。楠田文人です。
 電子書籍はこちら >>
はっぴいえんど」のアルバム「風街ろまん」の一曲、「春らんまん」の途中に

 巴旦杏もいろなしさね

と言う下りがあります。ふとこの歌詞を思い出しました。

巴旦杏(はたんきょう)。その響きと文字から穏やかな雰囲気がします。聞いたことはあるのだけどよく判らないとか、近くに巴旦杏がなかったり、見たことがなければ使う言葉ではないでしょう。普通の人が使う語彙にはないですね。調べてみました。
巴旦杏、スモモ。スモモか! プラムです。実は色鮮やかではないけれど落ち着いた濃淡のあるあずき色で、これが色をなくすってどんなに派手なのが現れたんだろう。甘酸っぱい実がおいしい。バラ科サクラ属でピンク色のサクラみたいな花が咲く。アーモンド(扁桃)の仲間。なんだって!?
アーモンドが扁桃(漢名)でスモモの仲間だったのは知らなかった。アーモンド、スモモともに、実や種でしか知らないので仲間と言うのが想像出来ないけれど、バラ科サクラ属で花の形が似てるんだろうか。扁桃は喉奥にある扁桃腺(へんとうせん)の扁桃で、いわゆるノドチ○コだ。平べったい桃の形に似てるのは種の部分だろう。扁桃腺と言われてたけど器官として腺ではないから腺が取れて扁桃になったらしい。名前を変えたって連絡は貰っていないけど、まあ、いいか。
ふと考えた。扁桃の種がアーモンドとして食べられるなら、巴旦杏の種は食べないのだろうか。スモモの果肉部分があれだけみずみずしいのに、種を食べようとしなかったのは不味かったんでしょうか。
葛根湯(かっこんとう)。こちらは漢方薬です。マメ科、葛(くず)の根と他の漢方薬を合わせた風邪薬です。こちらは未だに薬屋さんで売られている(と思う)のでご存じの方も多いと思います。葛餅の葛の根っこが薬になるんだ。

f:id:kusuda_fumihito:20200207153054j:plain

巴旦杏も葛根湯も、名前の音が独特で、同じ感覚の言葉仲間って感じです。
知らなかったら「巴旦杏」がスモモの名前とは気付かないし、葛根湯が薬とは思わない。かたや「杏」の字があるから果物っぽい感じがするし、杏仁豆腐ってバーミヤンにもあるし。かたや「湯」がついてるから薬っぽいし。
言葉の響きが同じ感じだからと言っても意味は全然違う。他の言葉にはこれほど独特の響きがないから目立たない。巴旦杏や葛根湯そのものではなく、言葉の響きでものを考えるってのは面白いかもしれません。