72.勝手に話を進めるキャラクタ達

電子書籍を書いています。楠田文人です。
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お話に登場するキャラクタは、性格や喋り方、癖などを設定して書きます。ビデオの台本もそうで、例えば二人(二匹でもいいが)で喋る場面は、書いている時それぞれに成り切って会話します。
会話がスムーズに流れている時はいいのですが、時々話が勝手に進んでしまうことがあり、予定と違う展開になってしまうこともあります。これは説明がつきません。想定してたキャラクタが途中から予定にないことを喋り出し、相手も予定していない返事をしてしまったりします。想定しない流れになることもあったりします。

A「それでは、従来の製品Aと新しい製品Bを比較してみましょう」
B「新しい製品の方がよくなってるんですよね?」
A「普通はそう思いますよね」
B「すると悪くなった新製品を出したんですか?」
A「いや、そう言う訳じゃないけど」
B「それ、売れないと思います。今までだってあまり売れてないじゃん」
A「そんなことはありませんよ」
B「販売数のデータは?」
A「こちらです」
B[あっ! なんでD地区だけたくさん売れてるんだろう?」
地図上に売上が棒グラフで表示されている。その左下の一ヶ所、D地区だけ飛び抜けて売上が多くなっているのだ。こんなことはあり得ない。
A「本当ですね」
Aさんもグラフをじっと見詰めて、首を傾げている。
A「D地域だけダントツで売れてます? 何故なんだろう」
B「何か理由があるんじゃないだろうか?」
Aさんは報告書を捲っていたが、あるページで手が止まった。
A「そう言うことだったのか…」
B「何か判りましたか?」
A「D地区では、従来の製品を買い変えた場合にインセンティブを付けるようにしていたみたいです」
B「インセンティブ?」
A「早く言えばオマケですね。買うと貰えるってことに釣られてほぼ全てのユーザーが製品を買い変えたので、驚異的な売上だったようです」
B「どんなオマケだったんですかね?」
A「そうですね。報告にはインセンティブを提供、としか書かれてません」

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あちこちのページを見ていたAさんが言う。
「判りましたよ! インセンティブにしたのは豆用のザルです」
「ザル?」
「この商品は『炒り豆製造機 豆炒っちゃうぞ』って焙烙を模した商品なんですけど、標準だと炒れる豆のサイズに制限がありましてね」
「エンドウマメとアズキしか使えなかったよね?」
インセンティブで様々な大きさの豆を使えるようにしたところ大受けしまして」
「うちでそんなオプション出してたっけ?」
「偶然取り付け部分が同じサイズのザルを見つけたらしくて、アメリカ製のサザーランド&Co,.Ltd.って会社の製品で、こいつを使うと小さいのから大きいのも炒れるようで。元はポップコーン用のザルらしいです」
「そんなの作ってる会社があったんだ。それで、ついでに買い換えて貰ったのか」
「新しい製品じゃないとうまく付かないって説明をしたらしいです」
「う~む。それをネタに買い替えを迫ったなら問題だけどね」
「追加のザルはうちの製品じゃないですから」
「とりあえず忘れておいて、問題が発覚したら考えるとしよう」