55.時代劇を書くのは心の入れ替えが必要

電子書籍を書いています、楠田文人です。
 電子書籍はこちら >>
お話を書き始めた頃は、時代劇を書くとは思ってもいませんでした。時代劇と言っても舞台が二、三百年前ってくらいですが。
右手から毒を出すことの出来る、月龍のお話です。
 「月龍」シリーズはこちら >>
宮木武蔵と佐々本小次郎と言う二人の剣士が登場するお話です。そして謎の猫も登場します。
 「猫と武蔵と小次郎と」はこちら >>
書いてみて、時代劇は設定が自由なことに気付きました。現代が舞台だと交通手段、通信手段は決まっているし、誰もが仕事に行かなければならないし、家は一人暮らしか家族と一緒かなど、設定(制約かも知れない)から逃れられることはできません。
「その男は、登山口に近い山小屋に一人で暮らしていた」
とかすると、そんなところでどうやって暮らしてたんだ、とか、何故一人で住んでいるんだろう仕事は何をしてるんだ、とか、何か理由があるに違いない、とか、登山口に近い山小屋って辺りが怪しい。そうだ! 誰かと約束して待ち続けているに違いない、とか、山で事件があって、その復讐のためにそこに住んでるんだ、とか、キャラクタが登場しただけで様々な憶測を呼び、話を進めるどころではありません。
これに対し、江戸時代だったら楽です。
「その男は、山を越えて隣村へに繋がる道のはずれに暮らしていた」
と言うだけで、何も問題になりません。もちろんその時代でも、そこにそうやって暮らしている理由はあるのでしょうけれど身近でないため、
「ふうん」
で終わってしまい、細かく突っ込まれることがないので楽です。
生まれてから大事にされて、走ったことのない殿が走り方を練習するお話「走殿」も書きました。時代劇の設定ではないけれど、「七道奇談」「七彩抄」とかにも時代劇みたいのを書いています。
 「走殿」はこちら >>
 「七道奇談」はこちら >>
 「七彩抄」はこちら >>

f:id:kusuda_fumihito:20190529113018j:plain

ただ一つ手間なのは、登場人物が昔の喋り方で会話しなければならないため、常に頭をその時代に合わせて置かねばならないことがです。このブログでも書いた「きょう一日、さむらいをした」も少しずつ会話が古い感じになって行きますが、これも頭をそう言う方に持って行かなければいけない。道具類の名前も馴染みがないため、
「あの笠何ていうんだっけ。編み笠でいいのかなぁ」
とか、いちいち調べなければならない。インターネットのなかった時代の時代劇作家は膨大な資料が必要だったでしょうね。
時代を舞台にしたお話と、近未来を舞台にしたお話を同時に考えるのは無理で、かなり混乱することは保証します。