14.摂氏と華氏とケルビン

摂氏(℃)はご存じですね。

「関東地方は今日もよく晴れて、昼頃には摂氏 20 度前後まで気温が上昇します」

摂氏は温度を現す単位で、セルシウス度と言い、1742 年にスウェーデン天文学者セルシウスが考案しました。水の融点と沸点の間を 100 分割した感覚的に判りやすい単位です。
華氏(°F)と言う単位もあります。ドイツの物理学者ファーレンハイトが 1724 年に考案したもので、水の融点を 32 度とし、沸点を 212 度にしています。数字が変なので調べてみました。
温度でマイナス表示をさせたくなかったとかで(何でだ!?)、これ以上ないってくらい寒い時を 0 °F にして(当時で摂氏マイナス 18 度くらいだったそうな)、自分の体温を 100 °F にしたらしい。そしてその間を 180 等分(何でだ!?)しました。待てよ! 摂氏と華氏の変換式は「°F = °C × 1.8 - 32」で、するってーと先生、体温 37.7777 °C って風邪弾いてるじゃん!
※ 最近では体温を基準にしていない、と言われているようです

 風邪と間違うと危険な「雨虫」のお話はこちら >>
暑さ、寒さと言う感覚的なものを数値に置き換えたことで、主観的判断が客観的判断に変わります。更に時間的空間的に離れていても比較出来るようになります。

「昨日、寒かったな。ビール一杯くれ」
 コインをカウンターに置きながら馬の世話人が親父に声を掛ける。
「ああ、でも一週間前の方が寒かったぞ」
「昨日の方が寒くね?」
「一週間前は 41°F で、昨日は 62°F だ」
 カウンターの向こうから、仕事帰りの野菜買い付け人が言う。
「何だそりゃ?」
ファーレンハイト先生の作った、寒さの目盛りだ」
「そんなもんがあんのか!?」
「便利だぞ」
「昨日寒かったな! 62°F か?」
 向こうの席からビールを飲んでいた靴屋の主人が声を掛けた。
「そうらしい」
「寒さを書いときゃ後で判るのはいいな」
「これを作った先生は一番寒い華氏を探してるらしい。0°F よか寒い華氏を探してるんだと」
「北に行きゃ一番寒い華氏が見付かるんじゃないだろうか」
 靴屋の主人が声を掛けた。
ノバスコシアじゃ 11°F だったらしいぞ」
 二人はその声に振り向いた。
「去年、靴屋組合でノバスコシアに行ったけど皆寒いって言ってた」
「ノバスコシヤに一番寒い華氏はなかったんかい?」
「なかった。もうちょっとのところだった」

摂氏と華氏は、「尺貫法」「メートルグラム法」「ヤードポンド法」などのように、それぞれ別の体系で管理されていて、これが混ざることはありません。
「公園ですか? 公園はここから 200 メートル程行ったところに、市が作ったカナリヤの彫刻があるんですけど、重さ 500 ポンドっつったかな、そこを左に曲がれば見えて来ます。おっ! もう卯の刻か」
あり得ない。

「先生おはようございます」
「おはよう。寒いね」
「一番寒い華氏を探して極地まで行かれたそうですね?」
「ああ」
「見付かったんですか?」
「見付からなかった。一番寒いところに住む極地人に会ったのだが…」
 教授は空を見上げた。
「極地はいつも寒くて、気温が変わらないことが判った」
「はあ?」
「挨拶に『今日は寒いね』とか『今日は暑いね』などの言葉がない。つまり、彼らにとって気温は変化しないものなのだ。温度と言う概念がない」
「成る程。一番寒いも何もないって訳だ」
「大量に持って行ったファーレンハイト寒暖計が一台も売れない」
「そりゃ困りましたね」
「そこで一計を案じた。急遽 0 °F の目盛りだけの、ファーレンハイト零度計に作り直して売った」
「どうでした?」
「大好評で売り切れたよ」
 そう言うと、教授は可笑しそうに笑った。

f:id:kusuda_fumihito:20171114151224j:plain

ケルビン(°K)と言う温度の単位もあります。これは物理学の熱力学温度の単位でケルビンさんが提唱し、1 度の感覚は摂氏と同じです。普段使うことはありませんが、実はケルビン、写真の世界では普通に使われています。温度(熱)は分子運動によって発生しますが、全く分子が運動しない状態が世の中に存在する最低の温度、マイナス 273.15 °C(0 °K)絶対零度です。分子運動が起きない絶対零度の物体(仮装的な物体)は真っ黒で、光も発しませんが、分子運動が活発化し温度が上昇するに連れて光を発するようになります。

※ この辺り、うろ覚えで書いてますので、正確な情報は物理学関連サイトをご覧ください
温度によって発せられる光の色味を「色温度」と言って、アナログフィルムはその色温度の光源下で適切に発色するよう造られています。フィルムは 2 種類あり「昼光タイプ」「タングステンタイプ」で、前者は昼間の屋外撮影を目的にした 5,500°K、後者は室内の白熱電球下の撮影を目的にした 3,200°K に合わせてあり、その光源下で正しい色再現、つまり白が白として再現されます。
デジタルカメラやビデオカメラは「ホワイトバランス」でこれを調整します。マニュアル設定できるビデオカメラのレンズキャップは白くなっていて紐が付いていて、このキャップを被せて光源に向け、白く映るようにホワイトバランスを設定します。ビデオカメラマンがよくキャップをなくす、と言う理由から付いているのではありません。ビデオカメラマンを暖かく見守ってあげましょう。